研究課題
タバコにはタバコモザイクウイルス(TMV)に対する抵抗性遺伝子(N遺伝子)が存在する。細胞にTMVが感染すると,その複製酵素のヘリカーゼ領域(p50)をエリシターとして認識し,Nタンパク質の働きにより,細胞死を伴う過敏感応答(HR)と呼ばれる防御応答を誘導する。人為的にp50のみを発現させてもN遺伝子の転写増強が誘導されることが知られていたので, N遺伝子の約2.3 kbの上流配列にレポーター遺伝子GFPを接続してプロモーター解析を実施した結果,p50が関与する転写増強にはDofファミリー転写因子が関与している可能性が示唆された。そこで本研究では,タバコDofタンパク質の一つであるBBF1について,N遺伝子の転写増強とNを介した防御応答における役割を調べた。N遺伝子をもつタバコで,p50の非存在下でBBF1を一過的に過剰発現させると,HRは誘導されないが,内在性N遺伝子の発現が増加した。次に,BBF1とp50を一過的に共発現させた結果,p50の単独発現の場合と比べてHRが増強された。一方,HR誘導時における内在性BBF1の発現量の変化を調べたところ,TMV感染やp50によるHR誘導時において,N遺伝子の発現は増強されたが,BBF1遺伝子の転写量に変化は見られなかった。興味深いことに,N遺伝子の有無に関わらず,BBF1の過剰発現時では,p50発現に非依存的にROSの産生量が増大したが,ROS産生に関わるとされるNADPHオキシダーゼ遺伝子(NtrbohD)の発現は影響を受けなかった。また,N遺伝子の非存在下でHRが誘導されない場合でも,BBF1を過剰発現時させると,サリチル酸やジャスモン酸を介したシグナル伝達経路のマーカー遺伝子(PR1a,PR1b)やHRマーカー遺伝子(Hsr203j,Hin1)の発現が増加した。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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