研究課題/領域番号 |
22580048
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
朴 杓允 神戸大学, 農学研究科, 教授 (20147094)
|
研究分担者 |
池田 健一 神戸大学, 農学研究科, 助教 (40437504)
|
キーワード | 酸素バブリング / 感染応答タンパク / 糖タンパク / グルタルアルデヒド固定 / 微細構造 / 根冠 / トルイジン青 / 液胞 |
研究概要 |
植物の根組織に対するグルタルアルデヒド(GA)のin vivo固定効果を調査した。前年度まで成果から、GAが生物組織の糖タンパクを強く保存する能力があることが分かっている。この結果をもとに、糖タンパクを多量に分泌する根冠を有する植物根組織を固定材料に選んだ。リン酸緩衝化したGA液にコムギ根を浸濱して、酸素バブリングを行いつつGAで根組織を90分間固定した。子定の再現性を得るために固定液の溶存酸素量を計測しつつ固定処理を行った。その結果、処理後30秒以内に酸素は固定液から減少し始め、固定10分以内に溶存酸素量はもとの40%となった。その後、時間の経過するにつれて、固定液の酸素量は更に減った。固定液を撹拌すると空気中から酸素が固定液に溶け込み固定中の酸素を補充できることが分かった。前固定後にオスミウム固定して組織を脱水した後、樹脂包埋した。重合組織の樹脂ブロックから0.5μmの厚さの光顕用切片を作製し、これに塩基性色素(トルイジン青)染色を施した。トルイジン青は粗面小胞体、軟骨基質、核基質を良く染めるため、その好染部位にはタンパク質、特に糖タンパクが多量に局在していると予期される。トルイジン青染色の結果、対照区のそれに比して酸素バブリング処理した根冠部位が強陽性に染まり糖タンパクの保存が良好であることを確認した。次いで、超薄切片を作製し、これに電子染色を処理して電子顕微鏡観察を行った。観察により細胞間隙に多量の糖タンパク性の粘液物質の保存が確認できた。また、根冠細胞の液胞に多量の不定形状糖タンパクの存在を認めたが、対照の無酸素処理区の根冠細胞では不定形の糖タンパクは認められなかった。この結果は酸素処理により液胞内の物質保存が行えたことを示唆する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
通常の化学固定より改良された固定法を開発している。そのための、基礎実験は終了した。今年度は酸素バブリング固定による細胞像の精密評価を行う。従来よりコントラストのよい細胞像が得られていると考えている。また、免疫電子顕微鏡のため抗原決定基の保存に優れた固定法が開発できると予想できる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年は酸素バブリング固定が細胞の生体膜のコントラストがよいこと、細胞基質が緻密に保存されていることを確認する。また、3つの固定法によりタンパクの保存の良否を調べる。1つは通常の化学固定法、2つ目は、酸素バブリング固定法、3つ目は加圧凍結固定である。3つの異なる固定により糖タンパクの糖と交差反応する金コロイド標識したレクチンを使って糖タンパクの保存程度を調査する。加圧凍結装置は神戸大学農学部では保有していないので、浜松医科大学の装置を使用する予定である。
|