キュウリの宿主特異的毒素生成菌である殺生性病原菌である褐斑病菌に対する光誘導抵抗性を調査した。褐斑病菌胞子を滴下接種し、赤色蛍光灯照射区と自然光区に保ち病斑形成を調査すると、自然光区では、滴下部に直径5mmの灰白色の大型病斑が接種2-3日後に形成された。感染葉における褐斑病菌の行動を調査すると付着器から伸びた侵入菌糸がキュウリ組織内に充満している像が多数観察された。しかし、赤色蛍光灯照射区では、1mmの小型病斑が形成されるかまたは全く形成されなかった。感染葉での褐斑病菌は、付着器からの侵入が自然光区に比べて著しく抑制されており、被侵入細胞では強い褐変が観察された。一方、褐斑病菌胞子をキュウリ第1本葉に接種し、病斑形成の認められる接種7日後に第2本葉に半活物性の炭疽病菌を接種すると病斑形成は著しく抑制されたが、褐斑病菌の場合は、病斑形成抑制は観察されなかった。このように、殺生性病原菌である褐斑病菌のキュウリ葉感染は半活物性病原菌である炭疽病菌に対するキュウリの全身獲得抵抗性を誘導したが、それは褐斑病菌に対しては全く効果を示さなかった。キュウリの全身獲得抵抗性の発現にはサリチル酸経路が重要な役割を果たしていることが示されている。以上のことは、赤色光照射によりキュウリに誘導される殺生性病原菌に起因する褐斑病抵抗性は、サリチル酸経路の関与した全身獲得抵抗性とは異なるメカニズムにより発現していることが示唆された。
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