研究概要 |
本研究は、ジャガイモ疫病菌Phytophthora infestansの半数体菌株(MX980400)の遺伝的特性を明らかにし、半数体を利用した疫病菌の遺伝解析法を確立することを目指して、3ヶ年計画で実施するものである。平成22年度は菌の系統解析やゲノムの染色体構成の解析等を主な目標として実験を行い、次のような結果を得た。 1.菌の系統解析 Griffith and Shaw(1998)のPCRプライマーを用いてmtDNAハプロタイプを調べ、半数体株がJP-2系統やUS-1系統の菌株とは異なるハプロタイプIaに属することを明らかにした。また、交配型については、テスター株との対峙培養では卵胞子を形成しなかったが、PCR-RFLPによる交配型決定法(Judelson et al.,1995))によってA2であることが判明した。 2.ゲノムの染色体構成解析 半数体菌株は遊走子を形成せず、発芽管破裂法は適用できなかった。そこで、種々の体細胞の核・染色体標本作製法を試みた。その結果、プロトプラストをメタノール・酢酸混液(混合比9:1)で固定し、水蒸気で表面を曇らせたスライドガラス上に滴下する方法が、蛍光観察に適した細胞質の被覆の少ない間期核標本作製に有効であることを見出した。また、再生プロトプラストを中期染色体標本作製に用いるための、プロトプラストの作製・再生方法を確立した。 3.半数体株の安定性に関する解析 半数体株の継代保存培養株のDNA含量をフローサイトメトリーで解析したところ、ゲノムの自然倍加によると思われる2n核が高頻度で存在することがわかった。そこで、hyphal tip cultureと単一プロトプラスト培養を併用して、n核の比率が90%を超える株を再分離した。
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