研究課題
本研究課題の最大の特徴は、植物細胞壁に存在するエクト型 ATPase(アピラーゼ)を分子標的とする病原糸状菌由来のサプレッサー(抵抗性抑制因子)の作用機序の解析を通して、細胞壁が独自に備えた異物認識・免疫システムとその回避の仕組みについて明らかにする点にある。申請者らはすでに、エクト型 ATPase の近傍には複数の免疫機構に関連したタンパク質が存在し、これらと協調して細胞壁での免疫応答を成立させていることを示してきた。逆に言えば、この ATPase の機能低下(活性抑制)が免疫不全を引き起こし、結果として病原体による感染を許すという考え方である。今年度も、細胞壁 ATPase を免疫応答の「マスター酵素」と位置付け、これを起点とするタンパク間相互作用や細胞内部(下流)への情報伝達について、生理・生化学的な解析を加えた。エンドウの細胞壁タンパク質を調製し、Blue-Native 電気泳動で解析した結果、エクト型 ATPase は活性酸素生成酵素の1つであるジアミンオキシダーゼと複合体として精製され、この活性が ATPase と同調して調節されることが明らかとなった。一方、エンドウ褐紋病菌由来のサプレッサーならびに ATPase 阻害剤を用いた解析から、ATPase の活性阻害とジャスモン酸を介した情報伝達系の亢進は深く関連すること、さらに、ジャスモン酸合成に関与する遺伝子を発現抑制したエンドウでは、本菌に対する感受性(罹病性)が著しく低下することなどが示された。これらの結果より、サプレッサーは宿主の細胞壁 ATPase を標的とし、この活性抑制がジャスモン酸合成を促進し、生成するジャスモン酸を介してサリチル酸に依存した防御機構を一時的に阻害することで自身の感染を有利にしているものと考えられた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (15件) (うち招待講演 1件)
Journal of General Plant Pathology
巻: 79 ページ: 12-17
巻: 79 ページ: 1-11
DOI: 10.1007/s10327-012-0405-7
巻: 79 ページ: 印刷中
巻: 78 ページ: 311-315
DOI 10.1007/s10327-012-0399-1
巻: 78 ページ: 303-310
DOI 10.1007/s10327-012-0396-4