研究概要 |
青枯病菌は、トマトやナス等広範囲の植物に感染する植物病原細菌である。その病原性には3型分泌系およびそこから分泌されるエフェクターが必須である。青枯病菌は他の植物病原細菌と比べてより多種類(70種類以上)のエフェクター分子を保有しており、宿主域の広さとの関連性が想定されている。しかし、個々のエフェクターの機能については不明な点が多く、また1種類のエフェクター分子を欠失させた変異株において、その病原性にはほとんど影響がないことが多い。そこで、本研究は、エフェクター分子を複数欠失させ、その変異株の病原性を調べることで、エフェクターの機能を解析することを目的としている。最終的には、すべてのエフェクター分子を欠いた変異株を構築するが、本年度は、特定のエフェクター群(Galaファミリー、SKWPファミリー、HLKファミリー)に焦点をあて、欠失株の構築を行った。Galaファミリーエフェクターに関しては、日本株OE1-1と同じphylotype Iに属するGMI1000株において7遺伝子欠失株の解析が行われているが、本研究においても基本的に同様の結果が得られた。SKWPファミリーエフェクター6遺伝子を欠失させた変異株は野生株と比較して、トマトに対する病原性がわずかに減少していた。一方で、HLKファミリーは3種類のエフェクターHLK1,HLK2,HLK3を含む。1遺伝子それぞれを欠失させた変異株の病原性は野生株のそれと変わらなかった。HLK1/HLK2二重欠失変異株、HLK2/HLK3二重欠失変異株の病原性は減少し、すべてのHLK遺伝子を失った変異株はトマトに対する病原性が著しく減少した。従って、HLKは相互に機能を補完しあっていると推測される。三重変異株の植物体内における増殖も抑制されていたことから、HLKエフェクター産物は、植物体内における増殖に関与している可能性が示唆された。
|