当該研究代表者が発見した、galleriae SDS-502株の産生するCry8Daタンパク質は、コガネムシ幼虫だけでなく成虫に対して殺虫活性を有している。鞘翅目害虫の成虫に殺虫活性を有するBt菌株については報告がないので殺虫活性機構についてはこの株でなければその殺虫活性機構を解明できない。 SDS-502株を、鞘翅目害虫防除資材として利用するには成虫に対する殺虫活性機構について明らかにしていく必要があると考えた。これまでの研究を通して、コガネムシ成虫やハムシ成虫におけるCry8Daトキシンの中腸におけるプロセッシング様式の検討により、トキシン断片は50kDaの大きさで、他のCryトキシンにみられるような、ドメイン1のαヘリックス部分に存在するループ領域にニックが入いることにより断片化され、中腸上皮組織に存在するレセプターに結合すること、中腸上皮組織上でその断片がオリゴマー化することで、細孔を形成し上皮組織の細胞を崩壊させて死に至らしめることが明らかになった。その際の、中腸上皮組織に存在するレセプター分子をアフィニティークロマトにより精製することで、レセプター分子を分離し、その分子の同定をTOFマスやN末解析で同定した。それによって同定されたレセプター候補分子としては、アミノペプチデースN、アルカリフォスファテースが幼虫からは同定され、βグルコシデースが成虫から同定された。コガネムシのβグルコシデースの塩基配列情報がなかったので、既に全ゲノム解読が進んでいる鞘翅目昆虫のコクヌストモドキのデータベースとN末解析によって明らかになった配列によって、DNAプライマーを作成しマメコガネ成虫からβグルコシデースの配列の一部を得たので、RACE法によりβグルコシデース遺伝子のクローニングに成功した。現在、そのβグルコシデースの機能解析を進めている。
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