研究概要 |
Ornithodoros moubataは吸血により栄養摂取を行い、長い間の絶食に耐える。そのため、中腸は重要な栄養の貯蔵器官であり、免疫の最前線でもある。自然免疫しか持たない節足動物の生体防御において、抗菌ペプチドは非常に重要な役割を果たしていると言われている。O.moubataは吸血後に、中腸細胞内で抗菌ペプチドのDefensinを合成し、中腸ルーメン内に分泌する。しかし、DefensinがO.moubataにおいてどのような役割を持ち、どのように合成が制御されているかについては明らかになっていない。昆虫では、抗菌ペプチドは主に細菌感染によって誘導されるものが多く、その誘導は転写因子のNF-κB/Relタンパクによって行われている。O.moubataでは、4種類の抗菌ペプチドDefensin(Pefensin A,B,C,D)は細菌感染および吸血によって発現が誘導される。さらにNF-κB/RelタンパクであるRelを有していることから、RelがDefensinの転写を制御しているのか調べた。まず、OmRelとDefensin遺伝子の発現を定量したところ、吸血後にまずOmRelの発現が上昇し、続いて、Defensinの発現が上昇することが明らかとなった。一般的に転写因子の発現後にそれが制御する遺伝子の発現が起こることが知られているため、OmRelがDefensinの転写を制御する可能性が示唆された。そこで、実際にOmRelがDefensinのプロモーターを活性化して、発現を誘導するのかレポーターアッセイで検証した。その結果、4種の内、Defensin Cのみのプロモーターを活性化して転写を誘導していることが明らかとなった。さらに、そのプロモーター上のOmRelが結合すると予測される配列を欠失させるとそのプロモーター活性は減少した。このことからOmRelはDefensin Cのみを転写制御することが明らかとなった。
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