研究概要 |
1)有機栽培体系におけるケイ酸資材およびPSI浄水発生土の水稲生育・収量に対する効果の解析 有機栽培体系(有機質肥料施用,化学肥料・農薬無使用)において,ケイ酸資材(ケイ酸カルシウム,シリカゲル)およびポリシリカ鉄(PSI)浄水発生土の水稲の生育・収量に対する効果を圃場栽培試験によって検討した。今年度は継続2年目。対照区に比べて3つのケイ酸資材施用区において,穂揃い期と成熟期のイネ体ケイ酸濃度は有意に増加し、穂数は変化しなかったが1穂モミ数の増加によって玄米収量が1~3%増加(有意差なし)した。有機栽培体系における水稲の生産性安定化にPSI浄水発生土を含むケイ酸資材が有効であることを示唆するが、統計的な根拠が得られていないことが課題である。 2)有機栽培体系におけるPSI浄水発生土の水稲根の伸長・活性に対する効果の解析 有機栽培体系において,PSI浄水発生土が水稲根の生育,活性に与える効果を明らかにするために,圃場枠栽培試験において根系の活性の指標である出液速度とイングロースコア法による根系の発生・枯死を含めた動態を調査した。その結果,地上部生育に大きな差異はみられなかったものの,根の発生量がPSI浄水発生土施用で有意に大きくなるとともに,水稲の茎あたりの出液速度(根の活性の指標)も大きくなる傾向にあった。これはPSI浄水発生土に含まれるケイ酸の効果である可能性がある。 3)培養法によるPSI浄水発生土のメタン生成抑制効果の検討 鉄含量の異なる沖積土(3土壌)に,酸化鉄と有機物の比率が異なる2つのPSI浄水発生土を添加し,湛水培養(30℃,28日間)を行い,メタン生成量を測定した。酸化鉄含量が高い土壌でのみ,鉄/有機物比の高いPSI浄水発生土で,PSI浄水発生土の施用はメタン生成量を有意に低下させた。PSI浄水発生土に含まれる酸化鉄が電子受容体として機能し,メタン生成を抑制したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
わが国では実施例が多くない,正しい反復を持つ水田圃場栽培試験を計画通りに実施し,解析も計画通りに進展している。さらに,解析しにくい水稲根系発達に関する実験も計画に沿って実施し,圃場試験が多くの要因に結果が影響されることを考慮すれば,十分な成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
統計的な根拠が得られていないことに対応するために、平成24年度(研究計画の最終年度)は,圃場栽培試験を継続するとともに,これまで得られた結果をより明確に証明し,その原因を解析するために,ポット栽培試験や室内培養試験を実施する。
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