植物根圏に生息する微生物群集は、植物根に対する直接・間接の作用により植物の生育や健全性に大きな影響を及ぼしている。したがって、この根圏微生物群を植物の生育や健全性にとって好適な状態に調節する、あるいは好適環境の指標として利用するという観点から、その多様性や群集構造(微生物群の種の構成)に関する研究への関心は高い。そこで本研究では、根圏における微生物-センチュウ群集構造解析法の確立による微生物補食センチュウの群集構造解析法の確立,微生物群集・センチュウ群集構造の植物根圏環境の指標としての活用の可能性解明を目的としている。本年度は、安定同位体13Cによる標識と微生物-センチュウ群集構造解析法を組み合わせた方法を確立するため、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析 (MALDI-TOFMS)を用いた同定・識別法を検討した。 ダイズ根粒菌を対象としてMALDI-TOFMSによる同定・識別解析の最適化を行った結果、菌株レベルで同定・識別することが可能であることを明らかにした。その解像度をITS領域のDNA配列解析の方法と比較した結果、同等もしくは菌株のよっては優れた識別力を示すことを見出した。 さらに、安定同位体13Cで微生物菌体を標識する方法を確立し、この標識菌体タンパク質をMALDI-TOFMSにて解析することで、微生物捕食性センチュウによる摂食を通した炭素の流れを解明できる可能性を明らかにした。この結果は、これまでDNAやRNAを安定同体で標識して解析するSIP法が行われてきたが、これに加えて菌体タンパク質を安定同位体で標識して解析する新たなSIP法の可能性を示した。
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