酸性土壌で発現するAlストレスに関しこれまで毒性や耐性機構について個別に多くの研究がなされてきた。しかし枯死しない程度の酸性土壌では植物根は障害を受けつつ、それに抗して成長を維持していると考えられる。即ちAl障害に対する回復現象として理解される。本課題はエンドウ幼植物根を用い、まず伸長の程度から明瞭な回復機構が働いていると考えられるモデル条件を設定した。40μMAlで12時間処理を行い、引き続き処理を継続した区(連続Al処理根)と他方は根を洗浄したのちCa溶液に移した区(回復処理根)を設けた。これら両区の根伸長を対照区の伸長に対する割合(RRG:relative root growth)を求めた。回復根では明らかに連続Al処理根に対し高いRRGを示した。回復根の再伸長が起こる部位を調べた結果、根端5mmで認められた。一方、Al障害による根の構造変化について調べた結果、細胞死の指標になるEvans blueで強く染色される帯状のZR(zonary region)とそれらの間に根の表層が崩壊したと思われるRZ(rupture zone)がみとめられ両者は交互に繰り返され比較的、規則性のある構造を示した。これらの構造変化は回復根と連続処理根で明瞭な差が認められた。即ち伸長回復過程では根の再伸長にともない中心柱が特異的に成長していると考えられた。これら構造変化の生理学的背景を酸化ストレスの側面から検討した。活性酸素類(ROS)の増加が連続処理根で認められたの対し、回復処理根ではその減少が認められた。特にO_2-の分泌量を定量し、その増加は原形質膜由来のNADPH oxidaseによる事を明らかにした。リグニンもO_2-と同様な挙動を示した。これらの結果は細胞壁の固さがストレスにより誘導され連続Al処理根では根表皮に近いところで崩壊が起こるが、回復根では酸化的ストレスが減少していることを示した。
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