研究概要 |
昨年までに回復処理のモデル系としてエンドウ幼植物のAl処理根をAl含まないCa培地に移した回復根と処理を継続した継続処理根を比較すると回復根のRRGは継続根のRRTの2倍であった。またその過程でエバンスブルー(EB)染色により帯状のEBで強く染まる部位[ZR]とEBでほとんど染色されないRRが認められ,ZRは回復根でも消滅せず、RRの部位は回復過程で伸長することを認めた。23年度はAl障害・回復過程で認められる構造的な変化に酸化的ストレスが関係していることを生理学的に解明した。すなわちDHE染色によりROS(reactive oxygen species)が継続処理根で増加し回復根で減少した。さらに根端からの酸素ラヂカル分泌量を調べた結果、継続処理根で分泌が最大であり回復根で減少した。また分泌した酸素ラヂカルはSOD(superoxide dismutase)の添加により消滅した。H202は酸素ラヂカルからSODにより生成されるのでその活性を測定した。継続処理根で約40%増加し、回復根では減少した。Alによる伸長阻害の一因は細胞壁におけるリグニンの増加と考えられており染色および化学分析いずれの方法でもリグニンは継続処理根で増加し回復根で減少した。酸素ラヂカル,H202,リグニンは根表層や比較的、外側の皮層に存在し、中心柱の近傍では認められずこれらの集積がAlにより破裂する(rupture)根の部位と一致した。回復根ではRR部位、即ち中心柱に相当する部位が伸長した。ZRは死細胞を含むので,ZRがプログラム細胞死と類似した作用でAlの侵入を防御する役割を果たし,ZRの下層の部位(中心柱)がAlが存在していても伸長機能を保持し、毒性Alが除去された回復根では伸長していると思われた。これらの考えはPlant Science誌の総説に記載され、詳細な結果は投稿準備中である。
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