研究課題/領域番号 |
22580074
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
池田 成志 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター畑作研究領域, 主任研究員 (20396609)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ダイズ / インゲン / 連作障害 / 根粒 / 根圏 / 土壌DNA / 微生物 / 多様性 |
研究概要 |
平成23年度と同じ圃場を使用して、前年度と同一(ダイズ根粒非着生系統、ダイズ根粒着生野生型系統(品種Enrei)、ダイズ根粒超着生系統、連作障害の発生程度の異なるインゲン品種(金時類・手亡類))の5つの作付け区を設定し連作試験を実施した。栽培はダイズ・インゲンの慣行栽培に準じて行った。本年度の栽培は順調であった。8月上旬に各試験圃場からバルク土壌(各作付け区画内の4隅と中央の5点)と9個体分の根圏土壌及び根組織についてサンプリングを行った。バルク土壌及び根圏土壌については、篩(直径2mm)にかけた後、試料あたり3反復でDNA抽出を行った。根組織については、凍結保存後、液体窒素により組織を均一に粉砕し、各作付け区画あたり3個体ずつをバルクとして、3反復でDNA抽出を行った。8月上旬の微生物相の分析試料の確保は順調に進めることができた。 上述の連作試験3年目にあたる5つの試験区から2012年8月に得たバルク土壌サンプルについて土壌DNAを抽出し、RISA法により真核微生物群の多様性評価を行った。具体的には、糸状菌類や線虫等の真核微生物群の検出が可能である2234Cと3126Tのプライマーセットを用いて群集構造解析を行った。その結果、ダイズ連作試験区においては、360bp付近に、ダイズ根粒菌の根粒着生量に対応するバンド濃度を示すDNA多型が得られた。バンド濃度は、超着生系統において最も高く、根粒非着生系統では検出されないか非常に低いバンド濃度であった。ダイズの根粒着生野生型系統において対応するバンドの濃度は超着生と非着生の中間であった。また、対応するDNAバンドはインゲンの2品種においても検出された。マメ科の連作において、根粒形成の有無が線虫を中心とする土壌微生物相の大きな構造変化を引き起こすという本研究課題の申請書において示した仮説と一致するデータが得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始年度からの圃場の作成及び気象等の影響を受けており、若干の計画変更はあるが、重要なサンプリングは順調に進めており、分析試料が一通りそろい始めているので、今後は課題提案での仮説検証が可能と考える。 2012年度の試料の一部を使った予備的実験において、マメ科連作の際の根粒形成の有無が真核微生物を中心にしたバルク土壌レベルで土壌微生物相に大きな影響を及ぼすことが示唆されており、申請書に示した仮説を支持する結果が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、平成22年度から平成24年度までの3年間について連作試験を行った5つの作付区(ダイズ根粒非着生系統、ダイズ根粒着生野生型系統(品種Enrei)、ダイズ根粒超着生系統、連作障害の発生程度の異なるインゲン品種(金時類・手亡類))の後に、マメ科の連作障害への感受性が非常に高いとされるインゲン(手亡類)を作付けする。開花期(8月上旬)にサンプリングを行い、バルク土壌、根圏土壌や根共生微生物への前作までの連作試験の影響を評価する。栽培は通常のインゲンの慣行栽培に準じて行う。 平成25年度までにサンプリングした試料を用いて、シークエンス解析やDNA多型解析等により、インゲンの連作障害と相関関係を示す根圏土壌微生物群・植物共生微生物群の特定を進める。また、可能であれば当該微生物群の分離・培養を試みる。
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