昨年度までに、Comamonas sp. E6株のテレフタル酸 (TPA)取り込みシステムが、TPA結合タンパク質のTphCと膜タンパク質成分のTpiA-TpiBから構成されることが強く示唆された。本年度は、TPA取り込みシステムが、真にTpiA-TpiBとTphCから構成されることを調べるために、TPAの取り込み能がなく、さらにTPA変換活性がないPseudomonas putida PpY1100株を宿主として、tphCとtpiBA遺伝子およびTPAをプロトカテク酸へと変換する酵素遺伝子群 (tphA2A3BA1)を導入した組換え体を作製し、TPAの変換能に基づいてTPA取り込み能を評価した。具体的には、tphA2A3BA1に加えてtphCとtpiBAをpJB866に導入したプラスミド、tphA2A3BA1に加えてtpiBAを導入したプラスミド、tphA2A3BA1に加えてtphCを導入したプラスミド、そしてtphCとtpiBAだけを導入したプラスミドを作製し、これらのプラスミドをPpY1100株に導入し、形質転換体を得た。各形質転転換体の細胞抽出液を用いてTPA変換活性を調べた結果、tphA2A3BA1を含むプラスミドを導入した形質転換体においてTPA変換能が見られた。一方、各形質転換体の休止細胞のTPA変換活性を調べた結果、tphA2A3BA1に加えて、tphCとtpiBAの両者を導入した形質転換体だけに活性が観察された。tphCとtpiBAの導入によってP. putidaがTPA取り込み能を獲得したことから、E6株のTPA取り込みシステムがTphCとTpiA-TpiBから構成されることが明らかとなった。本研究により、TPA変換系遺伝子を発現させた異種宿主によるTPA変換が可能となり、TPAからの有用物質生産系を構築するための基盤が整った。
|