LysRタイプ転写調節因子(LTTR)CbnRの誘導物質認識部位についてアミノ酸を置換して解析した結果、F98、T100、K129、R199、F202、V246の6か所のアミノ酸が誘導物質認識に関与することが判明した。これらのアミノ酸は、CbnRの制御ドメインのRD-IとRD-IIの間の領域を形成する位置にあり、この領域がCbnRの誘導物質認識部位であると考えられた。これら6か所のアミノ酸のうち、T100、K129、F202はホモロジーモデリングにより、誘導物質の1つであるムコン酸と水素結合を形成できる位置にあると考えられた。このムコン酸結合ポケットにあるアミノ酸のうち、G99、T100、R147、F194、P195、F202は、類縁のLTTRで同一もしくは類似アミノ酸として保存されていることから、この6アミノ酸がムコン酸結合ポケットを構成すると考えられた。R199AとV246Aの変異はそれぞれ被制御プロモーターの構成的な発現を起こすことが判明した。R199とV246はCbnRの4量体を構成するdimerの境界面に位置することから、R199とV246への変異導入は、サブユニットの会合に影響を与えてCbnRの4量体構造を変化させた可能性が高い。これらの構造変化は、プロモーターDNAとの複合体の立体構造に影響を及ぼしたことが示唆され、LTTRによる転写活性化の機構の解明につながる。CbnRと被制御プロモーターDNAとの結合の解析を目的とした共結晶の作製を検討する過程で、当初予定していたヒスチジンタグ付きのCbnRでは共結晶の作製条件に適合しないことが判明した。そのため、精製用のタグの無いnativeなCbnRを精製するためのタンパク質精製法を検討して、新たな方法を確立した。この精製法により、プロモーターDNAとの共結晶作製にCbnRタンパク質を供与することが可能となった。
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