研究課題
分裂酵母をモデルとして細胞の経時寿命を規定する因子の同定とその作用機構を解明することを目的とした。研究の結果、以下の成果を得た。(1) Ecl1が分裂酵母の経時寿命を延長させるメカニズムを解析するため、マイクロアレイ解析を行い、Ecl1を高発現することによって生じる細胞内変化を解析した。その結果、ストレス応答遺伝子群の発現が亢進していることを見いだした。(2) Ecl1の作用機構に関する知見を得るため、酵母Two-hybrid法を用いて、Ecl1と相互作用する因子をスクリーニングした。その結果、8種類の相互作用因子を同定した。(3) Ecl1がどのようなシグナルに応答して発現制御されるのかを調べる目的で、細胞周期による制御と各種栄養源の枯渇による制御を解析した。その結果、Ecl1の発現量は細胞周期を通して一定であること、窒素源が枯渇した際に、顕著に発現が誘導されることを見いだした。(4) 経時寿命延長に関わる因子を広範に検索することを目的として、経時寿命が延長する変異株をスクリーニングした。取得した経時寿命延長変異株の一つが、P-type ATPaseをコードするPma1の活性低下型変異であることを見いだした。(5) 熱ストレス転写因子Hsflは線虫において細胞寿命に関わることが知られている。分裂酵母のHsflについても高発現すると分裂酵母の経時寿命が延長することを見いだした。さらに、Hsflはecl2^+プロモーター上流領域に結合し熱ショックに応答したecl2^+の発現制御に関わること、Hsflの高発現による経時寿命延長効果はEcl2を含むEcl1ファミリー因子に依存することを示した。上記の研究成果により、分裂酵母の経時寿命延長に関わる因子に関して知見が蓄積した。特にEcl1ファミリーは、発見当初は未知の因子であったが、その作用機構の理解が進んだ。
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