研究課題
本研究の目的は、低酸素シグナルを認識するヒスチジンキナーゼを利用して、分生子形成能の高い麹菌Aspergillus Oryzae株を構築することである。平成23年度では、平成22年度に引き続き、近縁種であるAspergillu nidulansにおいて低酸素応答に機能するHysA(AnHysA)の麹菌オルソログを同定することを試みた(AoHysA)。A. nidulansにはHysAと同じファミリーに属するヒスチジンキナーゼが他に6つ存在するように、A.oryzaeにおいてもアミノ酸配列の相同性からのみAoHysAを推定することができない。AnHysAの発現が低酸素培養条件下、他のヒスチジンキナーゼに比べ高いレベルであることを指標にAoHysAの同定を試みたところ、A. OryzaeではAoHysAと同じファミリーに属する5つのヒスチジンキナーゼのうち1つ(AoHK8-e)において低酸素条件下における発現上昇が認められた。しかしながら、その上昇はAnHysAほどの高レベルを示さなかった。AoHK8-eがAnHysAのオルソログ(AoHysA)であるかを同定するために、AoHK8-eをalcAプロモーターの制御下AnHysAの破壊株に導入し、胞子形成能を観察することにした。AnHysAの誘導株は低酸素条件下、野生株に比べ胞子形成レベルの減少が認められるのに対し、AoHK8-eの誘導株は逆に胞子形成レベルが低酸素条件下で高く維持された。このことはAoHK8-eが低酸素条件に応答するが、AnHysAとは機能的に異なることを示唆した。AoHK8-eが麹菌の低酸素応答にどのように機能するかを明らかにするためには、A. Oryzaeの低酸素培養条件の検討、麹菌における破壊株の作成および機能変化を観察する必要がある。A. Oryzaeの同じファミリーに属する他のヒスチジンキナーゼがAoHysAと同様の機能を保持している可能性も検討する必要がある。
3: やや遅れている
低酸素培養の条件検討に必要なCO2培養器は、CO2もしくはN2ガスの注入で空気中のO2濃度を調節する装置で、すでに購入済みである。本培養装置をもちいて麹菌を培養し再度低酸素条件で高発現するAoHysAを同定していく。今回発見したAoHK8-eの機能解析に本培養装置を利用する。
本申請のO_2濃度を調節できるインキュベーターで、分生子形成に影響する酸素レベルを明確にする。逆に、当インキュベーターで、酸素濃度を一定に保ち、固体培養内部の低酸素環境を改善できると期待される。O_2膿度を調節できるインキュベーターでin vitroリン酸化実験を行い、酸素が直接HysA活性に影響するか確定したい。また、その他さまざまな反応温度や塩濃度の条件と組み合わせてHysAの自己リン酸化活能を観察することでin vivoにおける最適な培養条件の設定に応用する。
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