研究概要 |
本課題は硫黄代謝細菌のチオシアネート加水分解酵素下流に位置する未同定のオペロン配列を起点として、遺伝子産物の大量発現・複合体形成および輸送体タンパクとしての機能同定を行い、同バクテリアの硫黄代謝サイクルと、代謝産物(硫化カルボニル)の環境への放出に関する簡潔なモデル構築に貢献することを目的としている。本課題は平成22年10月に採択・開始され、初年度において以下の事項を実施した。 (1) 大量発現ベクターの構築。T.thioparus由来部分ゲノム配列が挿入されたコスミドクローンから、所与のオペロン構造(全長4250bp)を保った状態でpETシステムへ移植した。塩基配列に変異がないことを確認したのち、BL21AI株の形質転換体を作成した。さらに該当オペロン中の4種の遺伝子(orf2, 3, 4, 5)を個別にpETベクターに挿入し、C-末端に精製タグを付加したコンストラクトを作成した。 (2) 大腸菌宿主での蛋白質発現確認。上記形質転換体を発現誘導して得られた粗抽出画分をSDS電気泳動-CBB染色で確認した。orf2産物については有意な発現が見られた一方で、orf3-5については可溶性および膜画分には観測されなかった。微量蛋白質の特異的検出を目指して、抗体による標識や蛍光タンパク質融合タンパク発現系作成を鋭意進めている。 (3) オペロン下流遺伝子配列の決定。orf5遺伝子下流側の未解読配列について配列解読を進めた。その結果、orf5遺伝子の全長配列とその下流域に少なくとも1つの遺伝子が存在することが判明した。
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