研究概要 |
本課題では、Thiobacillus属細菌のチオシアネート加水分解酵素下流遺伝子群産物について機能的複合体として発現させ、その詳細を同定することを目指している。オペロンを構成する4種の遺伝子(orf2,3,4,5)について組換え体生産を行うため、前年度に引き続き種々の宿主を用いて以下の内容で発現条件検討を進めた。 (1) 膜外ドメイン遺伝子産物:ABC輸送体膜外ドメインに相当するorf2およびorf3の全長遺伝子産物は大腸菌や出芽酵母の宿主系では封入体画分に発現した。そのためこれらの可溶性発現を目指し、プレ配列付加体を作成し可溶化性状に影響を与えるかどうかを試みた。大腸菌ホストではpelBシグナルやN-末マルトース結合タンパク融合体の、出芽酵母組換え系においてはアルファ因子分泌シグナル配列の付加を行ったが、いずれも可溶化性状の改善は見られなかった。これらについてorf4遺伝子をポリシストロニックに組み込むことで共発現を試みたが、発現プロファイルに大きな変動は生じなかった。現在、二次構造予測から不安定と思われる末端配列を切除した発現系構築を進めている。 (2) 膜内ドメイン遺伝子産物:膜貫通配列を有するorf4およびorf5については、構築されたC末GFP融合タンパク大腸菌発現コンストラクトを用いて、膜画分からの可溶化スクリーニングを行った。小スケール発現における蛍光ゲルろ過分析ではイオン性界面活性剤およびC10・C12マルトシドを可溶化剤としたアッセイを行った。その結果得られた蛍光強度ピーク形状は単分散性を示さないものであることから、機能的発現には複数サブユニット同時発現などの構造安定化が望まれると判断された。
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