本研究では、「アセチル基転位酵素によるアミン類から高付加価値のあるアセチルアミド類の生産」を最終目標とし、研究期間内では物質変換にかかわるN-アセチル化酵素の特性解析を主目的とした。本年度は、脂肪族アミンのアミノ基を立体選択的にN-アセチル化する酵素生産菌についてその酵素特性を調べ、新たに得られた特異な新規酵素を用いた物質変換に対する知見を得ることができた。 1)1-(±)-フェニルエチルアミンを立体選択的にN-アセチル化するMicrobacterium paraoxydans FK-2-1について調べた。本菌の無細胞抽出液中に、アセチルCoA依存N-アセチルトランスフェラーゼを見出した。本菌の細胞抽出液を各種クロマトグラフィーにより本酵素を単一に精製した。本酵素の分子質量はゲルろ過法により分子質量は300kDa、SDS-PAGEにより51kDaであった。本酵素はSH基修飾試薬であるPCMBに対して顕著に阻害を受けた。芳香族アミンに対して高い活性を示すアリルアミンN-アセチルトランスフェラーゼと動力学パラメータを比較すると、3-アミノ安息香酸や5-アミノサリチル酸に対する活性は低く、脂肪族アミン類に対する基質特異性を調べたところ、(±)-1-フェニルエチルアミンおよびその誘導体に対しても活性を示した。同成果は、学会発表(生物工学会・一般講演)にて報告した。 2)α-アミノ酸を立体選択的にN-アセチル化する5-3Bおよび7-3D株について酵素の生産特性を明らかにした。生育と物質変換に与える因子の影響を調べた。共に、培地の最適pHは8.0で、ポリペプトンを添加した培地が生育および物質変換に最良であった。物質変換について経時的に調べた結果、培養56時間後にモル変換率が49%に達し、培地中に蓄積したN-アセチル化物はL体過剰で、エナンチオマー過剰率は99.5%以上であった。同成果は、産業財産権の取得を目指し、一般企業と準備中である。
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