研究概要 |
本研究では、「アセチル基転位酵素によるアミン類から高付加価値のあるアセチルアミド類の生産」を最終目標とし、研究期間内では物質変換にかかわるN-アセチル化酵素の特性解析を主目的とした。昨年度に続き、脂肪族アミンのアミノ基を立体選択的にN-アセチル化する酵素生産菌についてその酵素特性を調べ、目的にかなう新規酵素を用いた物質変換に対する知見を得ることができた。 医薬品合成時の鍵物質として報告されているキラルアミン(DL-2-フェニルグリシン, DL-2PG)のアミノ基を立体選択的にN-アセチル化できる菌株Chryseobacterium sp. 5-3B株について酵素の特性解析および遺伝子クローニングを行った。DL-2-フェニルグリシン‐ポリペプトン添加培地での生育とモル変換率や培地中に蓄積したN-アセチル化物のエナンチオマー過剰率を比較した結果、モル変換率49%、L-体N-アセチル化物のエナンチオマー過剰率99.5%であった。N-アセチル化にかかわる酵素は、アセチルCoA依存型N-アセチルトランスフェラーゼであり、L-体のN-アセチル化物((2S)-2-アセチルアミノ-2-フェニル酢酸)を立体選択的にN-アセチル化していた。本酵素はpH 7.5、60℃において最大活性を示した。基質特異性は高く、試験したアミン類の中でL-2PGに対して高い活性を示した。また、2PGの誘導体の中では、2-クロロフェニルグリシンに対しても活性を示した。一方、その他の脂肪族アミン類、芳香族アミン類、芳香環を有するアミノ酸に対してはほとんど活性を示さなかった。本酵素のN末端アミノ酸配列および類縁酵素の保存領域を基に同酵素のクローニングを行った。同成果は、原著論文(Biotechnology letters)学会発表(日本農芸化学会)にて報告した。
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