Zymobacter palmaeは、1995年に沖縄の椰子汁発酵液から分離した新種のエタノール発酵細菌であり、酵母やZymomonas mobilisよりも優れた発酵特性を示す。申請者は、Zb.palmaeに対して集中的に育種を加え、リグノセルロース連続糖化並行発酵菌を創出するための研究を世界に先駆けて実施してきた。これまでに、Zb.palmaeの宿主・ベクター系を独自に開発し、セロオリゴ糖糖化発酵性やヘミセルロースに由来するキシロースとマンノース発酵性の付与に成功するとともに、Zb.palameのゲノム解析も実施して全ゲノムの完全解読に成功している(未発表)。平成22年度では、新たなトランスクリプトーム解析法として開発されたHiCEP(High Coverrage Expression Profiling:包括的高感度遺伝子発現プロファイリング)技術とDNAマイクロアレイ解析技術を利用して、組換えZb.palmaeのエタノール発酵条件下における糖輸送代謝およびストレス応答に密接に関連した遺伝子群とその発現制御の全容を解明した。先ず、HiCEP解析条件の最適化のために、Zb.palmae細胞からのtotal RNA抽出法とmRNAの精製法を確立し、HiCEP解析に供した。一方、同条件下で調製したtotal RNAを用いたDNAマイクロアレイにより発現遺伝子の解析を行った。HiCEP解析技術とDNAマイクロアレイ解析技術から得られた結果を比較することにより、両解析技術の併用が網羅的遺伝子解析に有効であることを明らかにした。これら解析条件に基づきZb.palmaeに対してストレス負荷環境下での遺伝子発現解析を行った。その結果は、酸性ストレス条件下において、ある種のアミノ酸生合成経路を構成する酵素遺伝子群が発現上昇することを見出した。
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