研究概要 |
私たちは、分泌経路の遮断によってリボソーム生合成が転写レベルで制御されることを示し、さらに、このシグナル伝達に重要な機能をもつ因子としてリボソーム生合成調節タンパク質Rrs1とEbp2を同定している。本年度は、EBP2と機能的に関連する遺伝子を探索した。温度感受性ebp2変異株と条件的な合成致死を示す変異株を2株取得し、解析した。原因遺伝子はN(alpha)-acetyltransferase の1つであるNatAの触媒サブユニットと調節サブユニットをそれぞれコードするARD1とNAT1であった。この結果は、NatAがEbp2と密接に関わりながらリボソーム生合成に機能していることを示唆している。また、リボソームタンパク質L36をコードする遺伝子の過剰発現により、ebp2変異株の温度感受性が抑圧されることを見出した。NatAの標的タンパク質として、Ebp2, L36およびEbp2と機能的に関連してリボソーム生合成に必須な機能をもつBrx1に絞り、N末端のメチオニンの隣のアミノ酸残基をアセチル化されないプロリンに改変して解析した。その結果、Ebp2とL36の改変はどちらもebp2変異株の生育に影響を及ぼさなかったが、Brx1の改変はebp2変異と合成致死を示した。以上の結果から、Ebp2がリボソーム生合成において正常に機能するためには、Brx1のN末端のアセチル化が必要である可能性がある。また、小胞輸送遮断時のシグナル伝達にはアクチンと微小管の制御系が必要であることを示唆する結果を得ており、今後の研究の方向性を決めることができた。
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