研究課題
Eikenella corrodebsは歯周病関連細菌の一つで、その菌体表層のレクチンが本菌の病原性に大きく関与する。我々は臨床分離株の一つ(1073株)から線状ファージに由来するプラスミドpMUIを発見し、それにコードされたリコンビナーゼ遺伝子を標準株(23834株)に導入することにより、線毛遺伝子領域を含むゲノムが大きく再編されることを報告した。さらに、このゲノム再編により、線毛の消失に伴うコロニー形状の変化が見られ、またレクチン活性、バイオフィルム形成能、溶血活性、増殖速度、炎症性サイトカイン誘導能などのボ菌の病原性の各指標が上昇することも明らかにした。ゲノム再編が起こった株の線毛遺伝子領域の塩基配列を解析したところ、ある臨床分離株(VAI株)とほぼ同じであったことか嵐このようなゲノム再編如る高病原化が口腔内で頻繁に起こっている可能性が示唆された。国内外から分離された臨床分離株7株にpMUI由来のリコンビナーゼ遺伝子を導入した。その結果、4株にゲノム再編が見られたが、残りの3株では変化は認められなかった。また、ゲノム再編の見られた4株全てにおいて、線毛の消失に伴うコロニー形状の変化が見られ、レクチン活性、バイオフィルム形成能、溶血活性、増殖速度、サイトカイン誘導能が上昇していた。しかし、ゲノム再編が見られなかった3株では、これらの変化は見られなかった。したがって、ゲノム再編による高病原化がファージ感染などによって口腔内で頻繁に起こっている可能性が示唆された。また、ゲノム再編が見られた株は全てゲノム中に線状ファージ(pMUI)の配列を含んでいたことから、かつてファージ感染を受けた株が再度感染を受けることによって高病原化する可能性が示唆された。さらに、株が分離された地域性によって組換え株の検出頻度が異なっていたことから、ファージの感染が水平伝播により広がったことも示唆された。本研究により、口腔内でのファージ感染を介した遺伝子の水平伝播により歯周病原性細菌にゲノム再編が起こり、高病原化株が出現していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の目的であったゲノム再編のメカニズムについて明らかになりつつある。また、ゲノム再編によって生じる高病原化が普遍的に起こり得ることも明らかにできた。
高病原化株の検出率と病態との相関性について明らかにしたい。
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Journal of Applied Microbiology
巻: 112 ページ: 404-411
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
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http://web.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~azakami/