研究概要 |
ペクチンはホモガラクチュロナン領域とラムノガラクチュロナン(RG)領域から構成される高分子多糖であり、メタノール、酢酸、キシロース、アラビナン、アラビノガラクタン、フェルラ酸などで修飾を受ける。優れたペクチン分解能を有するPenicillium chrysogenumによるペクチン分解機構を明らかにする目的で、本研究課題では本ゲノム中に存在する47個の推定ペクチン分解系遺伝子の詳細な機能解析を目指している。平成22年度の研究では23遺伝子(アラビノフラノシダーゼ6種、アラビナナーゼ3種、ガラクトシダーゼ4種、ガラクタナーゼ1種、フェルラ酸エステラーゼ1種、RG分解酵素2種、ペクチンリアーゼ3種、ペクテートリアーゼ3種)のクローニングを行い、大腸菌および酵母での異種発現に成功した。アラビノフラノシダーゼについては組換え酵素を単離した後、各種基質を用いて反応特性解析を行った。その結果、アラビノオリゴ糖特異的、キシロオリゴ特異的、アラビノキシラン特異的(AXS5)、テンサイ分岐アラビナンおよびコムギアラビノキシランの両方に作用する酵素(AFQ1, AFS1)など、それぞれ異なる基質特異性を有することが明らかとなった。この内、枝きり酵素においては側鎖結合位特異性をNMRにより解析した。AXS5はアラビノキシラン中の2位および3位シングル置換アラビノースを、AFQ1はアラビナンおよびアラビノキシラン中の2位および3位シングル置換アラビノースを、AFS1は両基質中のシングル置換およびダブル置換アラビノースの両方を遊離させることを証明した。単離した6種のアラビノフラノシダーゼ遺伝子の発現解析より、4種はアラビナンで強く発現誘導が認められ、これらはペクチン分解に関与する遺伝子であることが示唆された。
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