今年度はマルチCDアミラーゼの存在意義を明確にすることを目的に以下の実験を行った。1.CSAAのCD間の相互作用についてプルラナーゼCDを欠失させたΔPulとα-Amy触媒残基を置換することで活性を大幅に低下させたΔAmyを用いて,全長CSAAとデンプン分解について比較した。その結果,ΔPulとΔAmyの等モル混合物よりも等モルのCSAAの方が高いデンプン分解活性を示し,PulCDとAmyCDが1つのポリペプチドとして存在することでCD間の連携的な反応が存在していることが強く示唆された。また,予備的な実験結果ではあるがX線小角散乱によって,CSAA全長よりもΔPulの方が大きい分子最大長を持つことが示され,CSAA全長はCD間で相互作用することが強く示唆された。2.β/α-AmyのX線小角散乱およびDSCによる解析SAXS散乱曲線のGuinier解析および距離分布関数の解析の結果,PPB-CDが球状構造を示したのに対し,SBDの増加に伴って球状からのずれが大きくなり,2つのSBDがPPB-CDから突出した構造であることが分かった。次に,PPBの散乱曲線を基に,すでに決定しているPPB-CDのX線結晶構造と2つのSBDのNMR構造を用いて,PPB全体の溶液構造モデルを構築した。その結果,PPBの平均構造は3つのドメインが直線上に並んでいるのではなく,CD-SBD1連結部で折れ曲がったL字型をしていることが明らかになった。PPBは2つのSBDで生デンプン表面に吸着し,表面から離れたPPB-CDで触媒反応を行っていると考えられる。さらに,DSC測定の結果,SBDはPPB-CDよりも高温で変性し,PPB-CD-SBD1やPPBのようにPPB-CDとリンカーで結ばれると,その変性温度が低下することが分かった。このことからPPBにおいてPPB-CDと各SBDとの相互作用が示唆された。
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