研究課題/領域番号 |
22580093
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
桐村 光太郎 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90195412)
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キーワード | 応用微生物 / 酵素 / 発酵 / バイオテクノロジー / 有機酸 / クロコウジカビ / ポリケタイド / 代謝工学 |
研究概要 |
本年度は、下記の項目について検討し、表記の成果を得ることに成功した。これらの成果を有効活用して、代謝工学的機能改変によりクエン酸生産糸状菌の能力を活用した糸状菌セルファクトリの創製を進めている。 (1)クロコウジカビ由来III型ポリケタイド合成合成酵素(PKS)の機能解析 ポリケタイドは多様な生理活性を示す有用化合物群である。その炭素骨格は、III型PKSにより触媒される開始基質脂肪酸アシルCoAへの伸長基質マロニルCoAの縮合反応により形成される。そこで新たに見出したクエン酸生産糸状菌等のクロコウジカビ由来III型PKSの遺伝子クローニングと機能解析を実施した。取得したcDNAを大腸菌を宿主として高発現させ当該III型PKSの機能を解析した。とくに、当該PKSが炭素数2~12の脂肪酸アシルCoAを開始基質として受容し、2~5回の縮合反応によりピロン化合物を選択的に生成することを明らかにした。 (2)細菌由来の新規アコニット酸イソメラーゼの機能解析と遺伝子クローニング アコニット酸イソメラーゼは、cis-アコニット酸とtrans-アコニット酸の異性化反応を触媒する酵素である。本研究では土壌より単離したPseudomonas sp.WU-0701にアコニット酸イソメラーゼ活性を検出し、当該酵素の精製および酵素的諸性質の検討、および遺伝子クローニングを行った。さらに、当該遺伝子の大腸菌を宿主とした異種発現に成功した。 (3)オキサロ酢酸加水分解酵素(OAH)遺伝子の高発現によるシュウ酸高生産株の作製 クエン生産糸状菌を宿主としてシュウ酸の生産に関与するOAH遺伝子の高発現により、シュウ酸高生産株を作製した。クエン酸生産糸状菌由来のOAH遺伝子高発現株を作製し、シュウ酸生産量を検討し、特定の培養条件においてシュウ酸の生産量が親株のそれと比較して顕著に増大することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、多様な有機酸の生産を目的として、クエン酸生産糸状菌の代謝工学的機能改変による糸状菌セルファクトリの創製を進めている。クエン酸からの代謝経路の改変によりシュウ酸やトランスアコニット酸、芳香族カルボン酸などの有用な有機酸の生産を実現すべく研究を進めている。現在、これらの目的を達成するために新たに導入する必要のある遺伝子の取得や機能解析が完了しており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、クエン酸生産糸状菌の代謝工学的機能改変による糸状菌セルファクトリの創製に向けて、とくにクエン酸からの代謝経路の改変に必要となる各種遺伝子の取得や機能解析を進めてきた。一方で、これらの遺伝子を実際にクエン酸生産糸状菌へ導入する際に必要不可欠な高効率相同組換え系の構築についても検討を進めてきた。今後はこれらの成果を基盤として、これまでに取得した遺伝子群をクエン酸生産糸状菌に導入することで代謝工学的機能改変を実施する。以上を通して、種々の糖質から高収率のクエン酸生産を可能とするクエン酸生産糸状菌の能力を活用し、多様なバイオベース有機酸の生産を可能とする糸状薦セルファクトリを創製する。
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