多くの病原菌は、口型または口型分泌装置と呼ばれる注射針の様な構造を用いて、宿主細胞に直接、病原因子(エフェクター)を注入することにより、その病原性を発現している。青枯病は、青枯病菌Ralstonia solanacearumが原因となる病害で、ナス科植物をはじめ、200種類以上もの植物に感染し、枯死させる農業上深刻な被害をもたらす病害である。我々は、多くの病原菌エフェクターが酵母において発現させた場合に酵母の増殖抑制を引き起こすという現象を利用し、酵母発現系を用いて効率よく病原因子機能を解析するシステムを開発してきた。本研究では、4800酵母破壊株から構成される酵母ジェネティックアレイにより、青枯病菌のエフェクター分子の宿主標的分子を網羅的遺伝学的手法により同定し、分子レベルでの青枯病菌の宿主への感染戦略を理解し、青枯病への予防対策へと応用することを目的とする。 初年度は、まず、青枯病菌全ゲノム配列を報告したグループから分与された青枯病菌エフェクター遺伝子30個に加えて、申請者が独自に青枯病菌ゲノムDNAから増幅したエフェクター遺伝子9個を酵母発現ベクターに組込み、酵母内で青枯病菌エフェクター発現における酵母増殖の影響を調べた。その結果、39個のエフェクターの内、エフェクター遺伝子発現により、極めて強い増殖抑制を引き起こすエフェクターとして1個、また、比較的強い増殖抑制を引き起こすエフェクターを1個見出した。現在、これら2つのエフェクターについて酵母ジェネティックアレイ法およびプロテオミクス解析によりエフェクター宿主標的因子の同定を試みている。
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