研究課題
2次元電気泳動法を用いて、シイタケの子実体形成時において働くタンパク質の網羅的解析に加え、ESTデータベースを活用し質量分析器(MS/MS)による発現タンパク質のアノテーションを試みた。子実体形成を3つの分化ステージに分けて解析を行ったところ、子実体原基には含まれるタンパク質の種類が若干少ないものの、子実体におけるタンパク質発現パターンと非常に似通った分布を示した。対称的に、栄養増殖菌糸体にのみ見られるタンパク質が多数検出された。これらタンパク質のうち、特異的かつ高度に発現しているタンパク質を選択し、質量分析器による解析を行った。得られた推定アミノ酸配列を様々なESTデータベースと照合した結果、約9割のタンパク質の機能に対するアノテーションが得られた(約1割は機能未知)。さらに染色法を駆使し、子実体形成時においてリン酸化及び糖鎖付加等の修飾が行われているタンパク質の検出に成功した。これらは翻訳後における制御を受けることにより、子実体形成メカニズムに関与していることが考えられた。青色光光受容体は二つのクラス、フォトトロピンとクリプトクロムに分類される。我々が報告しているPHRAはフォトトロピン・ファミリーに属するが今回、シイタケを含む担子菌から初めてクリプトクロム遺伝子を見出すことに成功し、Le.cryと命名した。その発現産物Le.CRYは特徴的なDNAフォトリアーゼ・ドメインとFAD結合領域とを合わせ持ち、クリプトクロム・ダッシュファミリーに高い相同性を示した。シイタケの子実体形成期及び子実体における各組織において、複数の光受容体遺伝子の発現をRT-PCRにより解析したところ、phrA及びphrBの子実体内における発現レベルは似通っている一方、Le.cryは独特な発現パターンを示した。これらLe.cryとphrA/phrBとの異なる遺伝子発現パターンは、Le-CRYはPHRA/PHRBとは違うシグナル伝達系で働くかもしれないことを示唆した。
2: おおむね順調に進展している
担子菌類初となる子実体形成時に働くタンパク質の網羅的解析に成功した。研究計画は順調に進行しており何ら問題はない。
本結果については論文を作成中である。次年度は、発現遺伝子の網羅的な解析も含めた、バイオインフォマティクス的手法を用いた詳細な解析を行っていく予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)
Proceedings of the 7th International Conference on Mushroom Biology and Mushroom Products
巻: 7 ページ: 58-67
巻: 7 ページ: 72-81