研究課題/領域番号 |
22580098
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
鳴海 一成 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (90343920)
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キーワード | 放射線 / 遺伝子 / 微生物 / タンパク質 / DNA修復 / 耐熱性 |
研究概要 |
放射線抵抗性細菌由来のDNA修復促進タンパク質PprAの構造解析を進め、PprAのホモポリマー形成に関わるアミノ酸残基に変異を導入し、ホモ2量体を形成するタンパク質変異体の結晶を用いて、2.5Å分解能のX線回折データを取得し、分子置換法により結晶構造解析に成功した。この構造をもとに、PprAのホモポリマー形成のモデルを構築した。このモデルでは、PprAがホモポリマーを形成したときタンパク質モノマー8分子で螺旋1回転し、その距離は約400から420Åであった。また、この螺旋構造の内側に正電荷を持つアミノ酸残基が集積していた。この結果から、PpfAタンパク質はDNAを取り巻くように結合し、上記の正電荷を持つアミノ酸が集積する領域がDNAとの結合ドメインを形成しているものと考えられた。一方、相同組換え修復経路で機能するRecF、RecO、RecRの機能解析を進め、RecFORタンパク質複合体の中でも、RecFタンパク質が組換え修復に一番重要で、相同組換え修復機構の初期過程において、相同組換え反応を司るRecAタンパク質の活性化を担っていることを明らかにした。また、RecRタンパク質は組換え反応の基質となるDNAの安定性に寄与していることが分かった。さらに、RecAタンパク質について、機能の類似性を評価するための方法を開発し、放射線抵抗性の好熱菌デイノコッカス・ジオサーマリス(Deinococcus geothermalis)、常温菌デイノコッカス・ラジオデュランス(Deinococcus radiodurans)並びに高度好熱菌サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)のRecAタンパク質の機能類似性を評価した。その結果、デイノコッカス・ジオサーマリスのRecAタンパク質をサーマス・サーモフィルスで発現させた場合に、十分に機能が発現するであろうことが予測できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り、DNA修復促進タンパク質PprAの構造・機能について、分子遺伝学及び構造生物学的解析を実施した。これに加えて、組換え修復経路に関わるRecFORタンパク質複合体及びRecAタンパク質の機能性についての研究をとりまとめ、当初の計画以上に研究が進展した。
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今後の研究の推進方策 |
DNA修復促進タンパク質PprAの野生型タンパク質に加えて変異型タンパク質を含めた生化学的解析を実施するとともに、高度好熱菌でのPprA遺伝子発現実験を行うことで、PprAタンパク質の構造・機能の解明及び応用に向けた研究を推進する。
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