研究概要 |
本研究では,加水分解酵素(アノマー保持・反転型の両者)改変酵素を作出しオリゴ糖の効率的生産への応用利用を示す. 1.アノマー保持型酵素:ミツバチαグルコシダーゼの機能(下記3点)に強く関与するホットスポットを改変した.すなわちわずか2アミノ酸残基の変異により,(1)基質特異性(ショ糖・マルトオリゴ糖),(2)糖転移率,(3)転移生成物の結合特異性(α1,4およびα1,6)が著しく変化した.マルトースからパノース,ショ糖からエルロースやテアンデロースを効率良く生成する変異酵素が作出された.変異酵素による触媒速度は,転移反応のために通常のミカエリス・メンテン式から逸脱し,高基質濃度により活性化または活性抑制の場合があり,これらは加水分解-転移反応モデルにより解釈された. 2.アノマー反転型:(1) アノマー反転型加水分解酵素(GA酵素,トレハラーゼ)に一次構造上類似する転移酵素(DD酵素)を解析した.1. 求核触媒残基をAla, Serに置換した酵素は,通常の基質に対する活性を失うが,通常の基質ではないβフッ化糖を基質として転移する,グライコシンターゼ活性を示した.酸塩基触媒残基変異酵素は,通常の基質に対する活性を失うが,良い脱離基を持つαフッ化糖には作用した.以上により,DD酵素の触媒残基を生化学的に決定した.2. GA酵素の触媒中心近傍の16アミノ酸残基のうち,DD酵素では保存されない7アミノ酸残基を解析した.求核触媒残基周辺の3残基のGA酵素型への変換によりDD活性は失われ,この領域がDD活性に必須であることが示された.(2) アノマー反転型トレハラーゼのグライコシンターゼ化に成功した.作出したサブサイト-1変異酵素は,塩基触媒変異酵素よりも高効率でβフッ化グルコースからトレハロース合成を触媒した.サブサイト+1変異を導入し, ガラクトース,タロース等を含む2糖が合成された.
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