これまでに、CES4変異マウスの精巣上体は酸化的環境になっていることが示唆されている。そこで、脂質の代表的な酸化ストレスマーカーである4-HNEの存在量をウエスタンブロッティングにより比較したところ、野生型および変異マウスの両遺伝子型における4-HNEの量に顕著な差異は見られなかった。 精巣上体のタンパク質の網羅的解析により、CES4変異による生理的・生化学的影響について解析を行った。野生型マウスと変異マウスの精巣上体尾部よりタンパク質を抽出し、2次元電気泳動を行った後、蛍光色素で発色させたタンパク質スポットのパターンを解析した。存在量に差のあるスポットをゲルから切り出し、ナノLC-MS/MS分析により、タンパク質の同定を行った。その結果、sorbitol dehydrogenaseがCES4変異マウスにおいて亢進していることが明らかになった。精漿中にはソルビトールおよびsorbitol dehydrogenaseが存在しており、ソルビトールをフルクトースに変換することで、精子運動のエネルギー源を提供すると考えられている。sorbitol dehydrogenaseが変異マウスで発現亢進していたことから、何らかの理由で、変異マウスの精巣上体尾部内精子の運動性が野生型マウスの精子よりも高まっている可能性や、精巣上体内でエネルギー供給不足が生じている可能性が考えられた。また、精子の鞭毛や先体部分を構成するタンパク質であるouter dense fiber ptoteinやsperm acrosome membrane associated proteinが変異マウスで減少していたことから、変異マウスにおいて精子数が減少している可能性が示された。
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