研究概要 |
酵母Pichia pastorisで作製したリコンビナントソーマチンI,植物由来ソーマチンIについての高分解能構造解析を皮切りに、これまで良好な結晶を得ることができなかったソーマチンIIの分解能1.27Åの構造を決定し、ソーマチンIとの相違点を明らかにした。アルカリ性条件下(pH 8.0)に於いて結晶化を試み、その構造を決定し、熱安定性に係る残基についての知見を得た (1)。ソーマチンの甘味発現に重要なArg82、Lys67の変異体(R82A, R82K, R82Q,R82E, K67A)について結晶化条件を再検討し、大型放射光施設(SPring8)にて分解能が1.0Å以下の高分解能回折データーを収集した。酸性アミノ酸残基(Asp21, Asp55, Asp59, Asp60, Glu42, Glu89)について変異体作製を行い、甘味に与える影響について検討を行い、甘味が強化された変異体の取得に成功した。そのうちAsp21についてその近傍に存在するアミノ酸残基に変異を導入し、甘味特性、甘味増強に係る構造的特性についても検討した。これまで、甘味タンパク質の甘味特性評価はヒトによる官能検査によって評価してきたが、客観的な評価が可能な甘味受容体を動物培養細胞に異種発現させた細胞を用いての甘味評価系の構築を行った。この系を用いて、さらに甘味受容体とソーマチンとの応答を検討したところ、ヒト型甘味受容体のサブユニットT1R3のシステインリッチドメインが重要かつ、5つのアミノ酸残基がソーマチンとの応答に重要な役割を果たすという知見が得られた(2)。 (1) Masuda et al., (2012) Biochem. Biophys. Res. Commun., 419, 72-76. (2) Masuda et al., (2013) Biochimie, 95, 1502-1505.
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