研究課題/領域番号 |
22580109
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
上田 直子 (小田 直子) 崇城大学, 薬学部, 教授 (70211828)
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研究分担者 |
大栗 誉敏 崇城大学, 薬学部, 准教授 (70346807)
中村 仁美 崇城大学, 薬学部, 助手 (60510691)
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キーワード | 毒動物(毒蛇) / 転写調節 / ベノミクス |
研究概要 |
日本の南西諸島(奄美大島、徳之島、沖縄)に棲息する毒蛇のハブの毒腺は、多種多様な生理活性成分を毒腺組織特異的に産生するが、その発現機構については全く解明されていない。組織特異的発現調節は、通常転写の過程で行われるため、本研究では、特に転写調節機構に注目した。毒腺組織の転写因子を同定することとした。毒腺組織特異的転写因子は毒が搾取された時に発現すると考え、毒搾取後の毒腺を用いて完全長cDNAライブラリー構築を構築し、トランスクリプトーム(網羅的)解析を行った。バイオインフォーマティクスにより、転写因子の候補としてepithelium-specific Ets factor(ESE)サブファミリー遺伝子を数個ずつ見いだし、それらの配列を解読した。現在、ESE-3ホモログを中心に、その転写活性能を分子生物学的手法により、解析中である。一方、これまでに我々はハブの棲息地毎に、毒成分の組成が一部異なることを見いだしてきた。これは食餌環境の違いによるものと考察している。幼蛇と成蛇では食性が異なるため、両者の毒成分を二次元電気泳動で比較解析したところ、幼蛇に特異的に顕著に発現する成分を見いだした。その部分アミノ酸配列を質量分析計で解析した結果、これまで偽遺伝子とみなされた遺伝子産物に特異的な配列を有しており、成蛇では発現していないものが幼蛇では発現している可能性を示唆した。そこで、本年度は、その毒成分がその偽遺伝子産物由来のものであるかを確かめるとともに、なぜ幼蛇に特異的に発現する意義を見いだすために、その蛋白質を精製し、諸性質を明らかとする。また、昨年よりハブゲノム解読を九大のグループと共同で開始した。そこで、現在蓄積中のデータを活用して、幼蛇及び成蛇特異的に発現している遺伝子群の配列を相互比較するなどして、ハブ毒成分遺伝子の転写調節の分子機構を明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、組織特異的転写因子の候補遺伝子(ESE-3)の立体構造解析を行う予定であったが、発現体の構築が難航していること等の技術的理由と研究状況の変化、そして何よりも新たに興味深い知見と研究協力を得たことから、当初の計画を変更したことによる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、推進計画は次のとおりである。 1)現在進行中のトランスクリプトミクスの結果から見いだした転写因子について転写活性能の解析を継続して行うこと、2)幼蛇に特異的に発現する遺伝子産物の発現意義を明らかとするため、その遺伝子産物(タンパク質)を精製し、その諸性質を調べること、3)現在、昨年末より開始しているハブゲノム遺伝子の情報(現在進行中)をもとに、ハブ毒成分遺伝子を発現量で分類し、各遺伝子のプロモーター領域を相互比較するなどして、ハブ毒腺遺伝子の転写調節機構を考察する。
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