研究課題
日本の南西諸島に棲息する毒蛇ハブの毒腺の主要な成分であるホスホリパーゼA2(PLA2)はアイソザイムを形成することが特徴であり、毒型PLA2はタンパク質として6種類、遺伝子としては数十のクラスターをなしていることを見いだしてきた。PLA2は、元来膵臓の分泌タンパク質として知られ、実際ハブでも毒腺には毒型PLA2が、膵臓には膵臓型PLA2が発現している。血管内皮細胞増殖因子(VEGF)でも毒型と組織型が存在する。このようにハブ毒成分の多くは、毒型以外に他の組織でも組織型アイソザイムが発現している。以上の背景から、本研究では毒腺組織特異的な発現調節機構、特に転写調節の分子機構を明らかとすることを目指した。昨年度までに、毒搾取後20h後の毒腺の完全長cDNAライブラリー(約1.5万)のトランスクリプトーム解析から、転写因子の候補クローン数種類を見いだした。今年度は、そのうち他生物で唾液腺に特異的に発現している転写因子に着目し、それらを大腸菌で発現させ、可溶化タンパク質を調製した。これを複数の毒型PLA2アイソザイム遺伝子の近位プロモーター領域に対してゲルシフト解析をしたところ、興味深いことに、この候補の転写因子は、大量に発現しているPLA2アイソザイム遺伝子のプロモーター配列に結合するが、偽遺伝子とみなされているPLA2プロモーター配列には結合しなかった。毒腺組織特異的な転写に関与していることが示唆されたため、現在詳細に解析中である。さらに、昨年度、奄美大島ハブ毒で見いだした幼蛇特異的に発現する遺伝子産物については、徳之島ハブ毒ではより顕著に発現していることを確認しており、現在、どうしてこのような現象がみられるのか(Why? & How?) 双方の観点からこの謎を明らかにすべく研究を展開中である。このように、本研究成果により、新たな研究課題がうまれ、発展させることができた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biosci Biotechnol Biochem.
巻: 77 ページ: 97-102
10.1271/bbb.120595
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