薬剤耐性ピロリ菌に対し抗菌活性を有するセスキテルペン類、癌細胞に対して細胞毒性を示すTopsentolide類、抗真菌活性を有するMajusculoic acidに関して、立体化学の決定を目的として合成研究を行った。 1.抗ピロリ菌活性を有するサンタロール型セスキテルペン類に関しては、タンデム型ラジカル環化反応を用いたビシクロ[2.2.1]ヘプタン骨格の効率的構築法の確立を目指した。反応遷移状態の配座を固定したtethered approachの開発により、大幅な反応効率の向上に成功し、タンデム環化の収率を大幅に改善できた。これにより、目的化合物をラセミ体として合成する経路を確立できた。本法は光学活性体合成にも応用可能であると考えられる。 2.腫瘍細胞に対して顕著な細胞毒性を示すTopsentolide類に関しては、可能な4種の立体異性体すべてを合成し、相対および絶対立体配置の決定を完了するとともに、腫瘍細胞に対する細胞毒性を評価し、構造活性相関の一端を解明することに成功した。 3.抗真菌剤として期待されるMajusculoic acidの合成に関しては、Simmons-Smith反応を用いたキラルビルディングブロック新規構築法を確立しているが、本重要中間体に対する側鎖の伸長などを経て、目的のMajusculoic acidメチルエステルの合成まで完了した。しかし立体選択性、収率などについて大きな問題点を残していることから、更なる検討が必要と考える。
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