研究概要 |
ラジカル種は一般にその半減期が短く、ESRを用いて直接分析できないものも多い。今回の研究対象となる炭素中心ラジカルは、活性酸素種(ROS)などに比べると、その半減期は長いものの、測定時間内に安定に計測するため、スピントラップ剤を用いて分析を行った。具体的には、市販されているDMPO、および、その類縁体であるDEPMPOを2-メチル-1-ピロリンから合成したものを用いた。また、DEPMPOをより疎水的な置換基に変えたDBPMPO,DPPMPOは現在合成中である。 炭素中心ラジカルの生体への影響を調べるには、その化学構造、半減期などを調べる必要があり、まず植物根から放出されるラジカル種のトラップ実験を行った。発芽5日後のダイズの根1個体を36 mM DEPMPO溶液に浸漬させたところ、15分以内に炭素中心ラジカルの信号を与えたが、DMPO、POBNではESRの信号を与えなかった。以上のことから、感度良く炭素中心ラジカルを計測するためDEPMPOを用いることとした。次に、培養液中に含まれる炭素中心ラジカルのDEPMPO付加物のシグナル強度を、経時的に測定したところ、このシグナルには少なくとも3種類の半減期を持つラジカルが存在しており、その半減期は110、210、8200分であった。半減期の長い炭素中心ラジカルについては、HPLC分離、構造決定を計画している。 以上、炭素中心ラジカルの捕捉方法、半減期など基礎的な性質の一端が明らかになった。
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