ラジカル種は一般のその寿命が短く、ラジカルトラップ剤を用いてその寿命を延ばしてESRで計測する。植物根は根毛を伸長させる過程で活性酸素種(ROS)を根外に放出することが詳しく研究・報告されているが、トラップ剤DEPMPOを用いて、植物根から放出されるラジカル種をトラップしたところ、ROSラジカルよりもその二次代謝産物と思われる安定な炭素中心ラジカルが検出された。 今回、放出されているラジカル種が脂質などに由来する可能性を想定し、オクタノール-水の分配比がDEPMPOと比較して大きいDBPMPO (5-(dibutoxyphosphoryl)-5-methyl-1-pyrroline N-oxide)を合成し、ラジカル種の捕捉を行った結果、炭素ラジカルを捕捉することはできたが、その信号強度は、DEPMPOと比較して1/5程度であった。このことから、DEPMPOにより捕捉されている炭素ラジカルは比較的親水的である可能性が示唆された。また、この結果は、捕捉されている炭素中心ラジカルの示す超微細結合定数が、炭素中心ラジカルにOHあるいはNHといった極性官能基がつながっている化学種が示す値に近いという推論に矛盾しない。 一方、DEPMPOを用いて捕捉したラジカル種を同定するため、HPLC-逆相カラムを用いて成分の分離、UV検出を試みた。トラップ剤およびトラップ剤の分解物のピークは認められたが、現時点ではラジカルピークの分離には至っていない。
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