研究課題
含硫複合糖質であるチオペプチドグリカンを分泌し、これを凝集させてマイクロチューブ(鞘)を形成する糸状性細菌(Sphaerotilus natans)における鞘新生箇所と細胞分裂箇所との位置関係を光学顕微鏡観察によって明らかにした。顕微鏡下で増殖する細胞列を継時的に観察することによって、列を構成するすべての細胞がほぼ同じ速度で伸長・分裂することを確かめた。すなわち、細胞分裂は鞘内の随所で一様に進行することが判明した。鞘の伸長部位の特定は蛍光標識化によって行った。まず、増殖中の菌体にチオール基ビオチン化剤を加えて鞘の既存部に存在するチオール基をビオチン化し、さらに培養を続けた。その後、新生部のチオール基をCy3で蛍光標識化(赤色)するとともに既存部のビオチンをFITC化抗ビオチン抗体で蛍光標識化(緑色)した。2重染色した菌体は末端部で赤色、中央部で緑色の蛍光を発したことから、鞘の伸長は末端部でのみで起こることがわかった。これらの実験結果から、各細胞から分泌されたチオペプチドグリカンは鞘内を徐々に拡散し、末端部において局所的に凝集することによって鞘を形成すると予想するに至った。さらに、これを明らかにする過程で確立した蛍光標識化法は環境におけるSphaerotilus natansの選択的検出に応用可能と考えられる。Sphaerotilus natansは鞘の外側に多糖による粘質層を形成し、菌体の沈降性低下をもたらす。多糖の分散能に着目し、その理由を理解すべく、その立体構造予測を分子動力学計算によって行った。水中を想定した計算によって示された最安定構造は、精製した多糖の溶液のNMR分析によって求めたプロトン核間距離とほぼ一致し、計算の確からしさが示された。多糖は水中で多重鎖を形成せず、自由度の高い一本鎖として存在することから、高い分散能を発揮すると予想された。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Carbohydrate Research
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