研究概要 |
本研究では,ジベレリンと甘味物質ステビオール配糖体の生合成を制御するシトクロムP450(CYP)に対する高選択性阻害剤を,阻害能のあるアゾール化合物の発見とその構造の拡張と固定による高選択性化というこれまでにない新たな手法によって創出し,それらを活用して生合成調節機構の解明を試み,植物調節剤としての実用化可能性を検討する。本年度の成果は以下の通りである。 1.ジベレリン生合成酵素CYP701A選択的阻害剤の創出:バキュロウィルスー昆虫細胞発現系により異種発現したイネCYP701A6アッセイ系を用いて,本研究室所有のウニコナゾールアナログ(ウニコナゾールの構造を拡張したり固定化した物質)をスクリーニングしたところ,高い阻害活性を有する化合物数種を見出した。この中から,ウニコナゾールの持つアブシジン酸代謝酵素CYP707A阻害活性を有さない化合物を探索し,UFAP2を見出した。ウニコナゾール類縁化合物で,高いCYP701A選択性を有するものは,UFAP2が初めてである。 2.ステビオール生合成酵素CYP714A2阻害剤イマザリルの構造改変による高選択化:昨年度にシロイヌナズナCYP714A2阻害剤として見出したイマザリルの酵素選択性について調べたところ,ジベレリン生合成酵素CYP701A6およびアブシジン酸代謝酵素CYP707Aに対しても高い阻害活性を有することが明らかになった。そこで酵素選択性の向上を目指して,イマザリルのアリルエーテル側鎖を様々な長さのアルキルエーテル側鎖に変換したアナログを合成した。このうちエチルエーテル鎖を導入した場合に,CYP701A6に対する阻害活性が著しく低下することを見出し,酵素選択性の向上を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の標的酵素は,CYP701A,CYP88A,CYP714Aの3種であり,このうち2種(CYP701AとCYP714A)について,それぞれ選択性の高い阻害剤を見出すことができ,国内の学会にてその成果を発表した。さらに,CYP701A選択的阻害剤については論文にまとめ,査読のある国際誌に投稿し,受理された(印刷中)。
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