研究課題/領域番号 |
22580120
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
尾添 嘉久 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (80112118)
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キーワード | グルタミン酸 / GABA / レセプター / 昆虫 / 神経伝達物質 / 薬理学 |
研究概要 |
昆虫のγ-アミノ酪酸レセプター(GABAR)と抑制性グルタミン酸レセプター(iGluR)は殺虫剤の作用点として注目されている。イエバエのiGluRサブユニットにはエキソン3のスプライスバリアント3A、3B、及び3Cが存在することから、イエバエ成虫組織におけるバリアント遺伝子の発現量を調べた結果、3Aと3Bは主に頭部において発現しており、3Cは頭部だけでなく、脚、腹部などの末梢組織においても発現が見られた。抹消組織におけるiGluRの発現は特異抗体を用いた免疫組織化学でも実証された。また、アフリカツメガエル卵母細胞にそれぞれを単独で発現させ、ボルテージクランプ解析を行ったところ、グルタミン酸に対するEC_<50>値と最大応答電流(1_<max>)にはバリアント間で大きな差はみられなかった。しかし、ウエスタンブロッティング及び[^3H]ivermectin B_<1a>結合試験によって、各バリアントの卵母細胞における発現量には差があることがわかった。その結果、チャネル単位のI_<max>は3Aと3Bが大きく、3Cは小さいということが推察された。エキソン3の変化は、チャネルのグルタミン酸に対する感受性ではなく、透過電流量に影響を及ぼすことが示唆された。 ワモンゴキブリ神経節細胞に発現するGABARとiGluRに対する殺虫性化合物PS-14活性を調べたところ、iGluRよりもGABARに対して約8倍強い非競合的アンタゴニスト活性を示した。また、アリルアミノピリダジンGABA類縁体を合成し、GABARとiGluRに対する活性を調べたところ、GABARに対する選択的競合アンタゴニストであることがわかった。これらの結果から、GABARをターゲットとする創薬の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の柱は、各組織における発現遺伝子解析とタンパク質発現を調べるための免疫組織化学、及びレセプターの機能解析・薬理学的解析である。最初の二つについては順調に結果が得られており、今後、三番目の薬理学的解析を行えば、ほぼ計画どおり研究を終えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの二年間でかなりの成果が得られた。特に、抑制性グルタミン酸レセプターについては1遺伝子から3種類のスプライスバリアントが得られ、そのバリアントは発現している組織や機能において違いがあるという興味深い結果が得られた。また、GABAレセプターとの間でも組織局在が異なることが明らかとなり、よく似た機能をもつ二つのレセプターが棲み分けをしていることが推察された。研究最終の今年度は、両レセプターをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させ、ボルテージクランプ法を使って、GABAレセプターの機能解析・薬理学的解析とグルタミン酸レセプターの薬理学的解析を行い、最終目的であるレセプターの比較薬理学を完成させる。
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