研究概要 |
放線菌Streptomyces rochei 7434AN4株は2つのポリケチド抗生物質ランカサイジン(LC)・ランカマイシン(LM)を生産する。また微生物ホルモンSRBを鍵物質としたLC・LM生産制御カスケードの存在も示唆された。本年度は(1)モジュラー・反復混合型ポリケチド生合成の解析,(2)二次代謝制御遺伝子群の解析,(3)SRBの単離・構造決定,に焦点を絞り研究を実施した。 (1)モジュラー・反復混合型ポリケチド生合成系を証明する鍵物質を得るため、IkcG-チオエステラーゼ(TE)ドメインの発現ベクターの構築に着手した。IkcG-TEの誘導発現型ベクターを親株およびIkc-PKS破壊株に形質転換し、PKSからの遊離ポリケチド中間体の取得を試みている。 (2)SRBリセプターsrrAの標的遺伝子の発現解析を行ったところ、SARP型アクティベーターsrrY,リプレッサーsrrBの発現が16時間以降で開始されることが分かった。また、前者の発現は30時間以降で減少し、後者のそれは40時間以降でも定常的であった。すなわち、srrYの発現が、培養前期はsrrA,培養後期にはsrrBによって抑制されていることを示唆している。これはsrrYの一過的発現による巧妙な抗生物質生産調節機構を示す知見である。 (3)SRBの単離・構造決定を行うため、200リットルスケールで培養し、各種クロマトグラフィーで精製した。高分解能質量分析により2つの活性成分の存在が示唆された。それらの構造をNMRで解析したところ、いずれもγ-butenolide骨格を有する新規シグナル分子であった。今まで知られている放線菌微生物ホルモンはいずれもγ-butyrolactone骨格であり、本成果によりシグナル分子の構造多様性を見出すことが出来た。
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