研究概要 |
放線菌Streptomyces rochei 7434AN4株は2つのポリケチド抗生物質ランカサイジン(LC)・ランカマイシン(LM)を生産する。また微生物ホルモンSRBを鍵物質としたLC・LM生産制御カスゲートの存在も示唆された。本年度は(1)モジュラー・反復混合型ポリケチド生合成の解析,(2)LC生合成におけるPQQの機能解析,(3)二次代謝制御遺伝子群の解析,に焦点を絞り研究を実施した。 (1)モジュラー・反復混合型ポリケチド生合成系を証明する鍵物質を得るため、β-ケト基還元の立体化学選択性を司るアスパラギン酸残基に注目し、IkcF-KR1ドメインの点変異株(IkcF-KR1^<D351L>)を構築した。本株の代謝産物解析を行ったところランカサイジン生産は失われており、本変異がポリケチド生合成に影響を及ぼすことが分かった。現在、微量代謝産物の構造解析を行っている。 (2)PQQ合成酵素遺伝子破壊株FS7株の代謝産物を調べたところ、親株非生産の化合物の蓄積が見出された。これらの化合物を構造解析したところ、抗カビ化合物ペンタマイシンおよびポリケチド化合物シトレオジオール、epi-シトレオジオールであった。また、PQQ要求性酵素Orf23の酵素活性を調べるために大腸菌発現系でタンパク発現を試みたが、有意なタンパク生成は認められなかった。そこで放線菌発現用プラスミドpHSA81を用いてOrf23発現ベクターを構築した。 (3)抗生物質生産を正に制御するSARP型アクティベーターsrrYの発現が、培養前期はsrrA,培養後期にはsrrBという2つのリプレッサー遺伝子に制御されていることを前年度に見出した。本年度は各種遺伝子破壊株での網羅的発現解析を行ったところ、ΔsrrA株ではsrrYおよび抗生物質の早期発現・生産が認められた。一方ΔsrrB株ではsrrYの発現が培養後期でも観察され、抗生物質の過剰生産が引き起こされた。以上よりsrrYの一過的発現による巧妙な抗生物質生産調節機構を示すことが出来た。
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