研究概要 |
牛乳中の主要な乳清タンパク質であるβ-ラクトグロブリン(β-LG)は、必須アミノ酸を豊富に含む良質のタンパク質であり、乳化性、ゲル化性、気泡性といった機能特性に優れ、有用な疎水性のリガンド結合能を有しており、優れた食品素材となる可能性を有している。しかしながら、塩存在下、酸性条件下で乳化性が低下すること、さらに強力なアレルゲン性を有することから、その利用には請願がある。そこで、本研究では、β-LGの機能改変を目的として、実際の食品への応用可能な方法として、微生物由来のトランスグルタミナーゼ(MTGase)を用いて、ポリリシン(PL)とのバイオハイブリッドを作出を試みた。 β-LGは、生脱脂乳よりArmstrongらの方法により単離し、DEAE-Sepharose Fast Flowを用いた陰イオン交換クロマトグラフィーにより精製を行った。MTGaseは、味の素株式会社製のアクティバTG-Kを用いた。β-LG-PLハイブリッドの調整条件を検討し、β-LG:PLのモル比が1:9になるように、混合し、2,000unit/g proteinとなる条件でMTGaseを加え、37℃で48時間反応させることにより、ハイブリッド分子の調製に成功した。ハイブリッド分子の精製は、複数回のCM Sepharose Fast Flowを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー、および透析を組み合わせることにより行った。ハイブリッド生成の確認は、SDSポリアクリルアミドグル電気泳動により行った。得られたハイブリッド分子の組成をアミノ酸分析により行い、β-LG:PL=1:1.2であることが明らかとなった。 以上のように、本年度は、MTGaseを用いてβ-LG-PLハイブリッドの作出に成功した。得られたハイブリッド分子の構造、機能について、今後検討を進めていく予定である。
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