研究概要 |
牛乳中の主要な乳清タンパク質であるβ-ラクトグロブリン(β-LG)は、必須アミノ酸を豊富に含む良質のタンパク質であり、乳化性、ゲル化性、気泡性といった機能特性に優れ、有用な疎水性のリガンド結合能を有しており、優れた食品素材となる可能性を有している。しかしながら、塩存在下、酸性条件下で乳化性が低下すること、さらに強力なアレルゲン性を有することから、その利用には制限がある。そこで、本研究では、β-LGの機能改変を目的として、実際の食品への応用可能な方法として、微生物由来のトランスグルタミナーゼ(MTGase)を用いて、ポリリシン(PL)とのバイオハイブリッドの作出を試みた。 昨年度までに、β-LG:PL=1:1.2の組成のハイブリッド分子を得た。得られたハイブリッド分子は、等電点が塩基性側へ大きくシフトし、ネイティブβ-LGの全体的な高次構造をほぼ維持していた。ハイブリッド化による機能改変として、乳化性の改善、免疫原性の低減化を認めた。 本年度は、ピンペプチドを用いて近交系マウス(BALB/c、C3H/He)で得られた抗血清の反応性を調べ、β-LG-PLハイブリッドのB細胞エピトープの解析を行ったところ、33Asp-40Arg付近の応答性が低下しており、35GlnにPLが結合したことが示唆された。 さらに、メイラード反応を介して、β-LG -PLにデキストラン(Dex, 分子量10,000)を結合した可食性β-LG-塩基性多糖ハイブリッド(β-LG -PL-Dexハイブリッド)を得た。得られたハイブリッドの組成は、β-LG -PL:Dex=1:2.0であった。BALB/cマウスを用いてβ-LG -PL-Dexハイブリッドの免疫原性を調べたところ、ハイブリッド化による有意な免疫原性の低減化が認められ、特に、β-LG -PLハイブリッドの場合よりもさらに効果的であった。
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