馬鈴薯澱粉(PS)をリパーゼ溶液に浸漬し、エタノール脱水後風乾してリパーゼ保持澱粉(Lip/PS)を調製した。n-ヘキサン、オレイン酸(OA)およびモレキュラーシーブを加え、30℃で46 h撹拌しながら加熱しアシル化した。n-ヘキサンおよびエタノールで洗浄後、風乾してOA結合PS (OA-PS)を得た。Lip/PSにOAを加え、65℃で16 h加熱し、未反応のOAをn-ヘキサンで洗浄除去し、風乾して無溶媒系OA-PS (solvent-free)を調製した。OA-PSのOA含量はそれぞれ約5.5%および0.6%で、偏光像およびx線回折パターンからnative PSと同様の結果を示したので、アシル化によって澱粉の結晶構造の本質的変化はないと考えられた。n-ヘキサンを用いてアシル化して調製したOA-PSも、無溶媒系で調製したいずれのOA-PSも糊化温度が上昇し、粘度および膨潤度が著しく低下した。110℃で30 min加熱しても膨潤粒は崩壊せず、100℃におけるOA-PSの糊液からの水分散逸は、native PSより速やかであった。また、native PSは濃度が増加しても蒸留水と同じ表面張力を示したが、OA-PSは、濃度依存的に表面張力が低下した。以上のことから、Lipの逆反応でPSにOAが結合でき、低膨潤で両親媒性のある澱粉が開発できると考えられた。
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