研究課題/領域番号 |
22580128
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
波多野 力 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (50127578)
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研究分担者 |
竹内 靖雄 岡山大学, 大学院・医歯薬学総合研究科, 教授 (00163387)
坂上 宏 明海大学, 歯学部, 教授 (50138484)
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キーワード | 機能性成分 / タンニン / ポリフェノール / 培養がん細胞 / 口腔がん / 植物組織培養 / ギョリュウ科植物 / 未利用植物資源 |
研究概要 |
機能性食品に広く含まれる各種ポリフェノール類についてこれまでに腫瘍細胞への作用を検討してきた結果、タンニンに分類される比較的高分子のポリフェノール系化合物群に、期待されるような作用を有するものがあることを見出してきた。中でも、砂漠の過酷な条件でも生育し、植物資源としての有効利用が期待されるギョリュウ科植物のうち、エジプト産のTamarix niloticaからは、新規化合物のnilotinin M4,D7,D8,D9など、種々の加水分解性タンニンを単離し、それらの同定・構造解明を進め、それらの中には大環状構造を有するものがあることをも明らかにした。さらに、それらのタンニンの多くに、口腔がん細胞に対する強い細胞毒性を示すものがあることを認め、正常細胞に対する毒性が相対的に低く、腫瘍選択性の高いものがあることを見出してきた。このような天然物質を開発の基本とする場合、その安定供給の確立が重要となることから、さらに本年度は、植物組織培養によるこれらの物質の安定的な生産条件の確立を進めることとした。日本国内で園芸植物として入手が可能なギョリュウ科植物のうちTamarix tetrandraから、インドール酢酸およびベンジルアデニンを含有する培地によってシュート培養を誘導・確立し、このシュート培養から14種のエラジタンニンを単離し、この手法によるタンニンの確保が可能であることを確かめた。さらに、ホルモン無添加培地によって、このシュート培養から根の分化の促進が可能となり、この過程を通じて再生した植物は、通常の土壌および天候下での馴化・生育が可能となることをも明らかにした。すなわち、このような再生植物を大量増殖させることによって、その成分としてのタンニンの安定的な供給が可能であることが示された。これらに加えて、さらに人工タンニンについても関連構造の物質の精査を進めており、構造によって作用が大きく異なることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
植物性食品やその他の資源植物からの機能性物質抗腫瘍作用物質開発の過程で、新規構造を確立してきた天然物質や、関連の合成化合物について、培養がん細胞に対する細胞毒性を見出してきた。また、天然物質の植物組織培養による生産条件を確立し、さらに植物資源自体の大量増殖をも可能とするような分化の手法をも確立してきた。これらに加えて、多剤耐性黄色ブドウ球菌に対する抗菌作用や、耐性抑制作用を有することを見出すことができた。これらは当該物質開発の意義・価値をさらに高めるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
予備的検討によって、これまでに抗腫瘍作用を見出してきた天然物質に関連の構造を有する物質の存在が期待される資源植物についても、成分の精製単離、構造解明を進め、その抗腫瘍作用について検討を進めるとともに、これら天然物質をモデルとして合成したフェノール系化合物についても、その構造と作用との関係について検討を進めることとしている。
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