研究概要 |
まず、DOPACの生理活性の評価を、消化系細胞株を中心に用いて検討した。特に、肝細胞における第2相薬物代謝酵素遺伝子の発現誘導作用、各種がん細胞での細胞増殖抑制・アポトーシス誘導作用を対象に、DOPAC及びガロイル型ポリフェノールである(-)-epigallogatechin-3-gallate(EGCG)の効果をRT-PCRをはじめとした各種分子生物学的、生化学的手法を用いて評価した。併せて、DOPACの持つ化学特性について、ゲルセチン配糖体のDOPAC以外の主要な代謝産物である3-hydroxyphenylacetic acid、3,4-dihydroxybenzoic acid、hippuric acidと比較を行い、ケルセチン配糖体の代謝過程におけるDOPAC生成の生理的意義付けを試みた。 得られた主な成果は、1)ケルセチン配糖体代謝物の中でDOPACが最も強力なラジカル捕捉活性、過酸化水素酸性活性を示した、2)DOPACはHL-60細胞に対して有意にアポトシースを誘導するとともに、肝細胞において解毒酵素の一つであるグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性を増強した、3)EGCGの酸化に対する不安定性と求電子反応性との相関をin vitroで証明するとともに、胃がん細胞株AZ521細胞における細胞増殖抑制作用のEGCGの分子標的としてDEAD-box RNAヘリカーゼp68を同定した。 一方、DOPACの標的タンパク質同定研究については、新規ラベル化DOPACとして、[2+3]型付加環化反応を利用したいわゆる「In situ click chemistry」を可能とするDOPAC-alkyneの合成を開始した。具体的にはDOPACとプロパルギルアルコールとのエステル化反応で作製し、現在高収率大量合成法を目指した条件検討を行っている。
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