研究概要 |
これまでの研究により、血管新生抑制作用を持つ食品機能成分が多彩な生理機能を示すのは、血管新生関連遺伝子だけでなく、様々な遺伝子の発現に影響を与えている結果であることが示されている。なかでも、高齢化社会を迎え、高齢者に多い脳疾患のリスクを下げる作用が示唆されたローズマリーに含まれるカルノシン酸について、細胞を用いた神経細胞保護作用機構と老化促進マウスを用いたin vivoモデルでの経口摂取による有効性の評価を行った。 酸化ストレス・飢餓・神経毒に対するカルノシン酸の神経細胞保護作用について、ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞を用いて検討したところ、酸化ストレスと飢餓に対する耐性をもたらすことが明らかとなった。また、その作用機構として、オートファジー活性化作用が関与していることを明らかにした。この結果は、遺伝子発現解析の結果から推察されていた細胞内の代謝系の変化とも一致しており、カルノシン酸によるこれらの細胞内代謝の変化が細胞保護的に働くことを示すことができた。なお、カルノシン酸の細胞保護効果には細胞内情報伝達系(PI3K/Akt, MEK/ERK)への作用も重要であることを示すことができた。 カルノシン酸を含むローズマリー抽出液を経口投与した老化促進マウス(SAM)は、老化初期ではMorris水迷路試験などで脳機能保護効果が見られたが、後期では明確な効果は確認できなかった。また、高純度のカルノシン酸を投与したSAMにおいては、老化の初期以降でも脳機能保護効果が示された。さらに、脳について組織化学的に検討したところ、カルノシン酸摂取群では一部で神経細胞死の抑制が見られたことから、カルノシン酸の経口投与は脳機能保護的に働く可能性が示唆された。
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