HeLa細胞におけるヒスタミンやPMA刺激に伴うH1R遺伝子発現亢進には、PKCδ-ERK-poly(ADP)ribose polymerase-1 (PARP-1)シグナル経路が関与し、刺激に伴いPKCδが細胞質からゴルジ体に移行することがH1R遺伝子発現に重要であることを明らかにした。また、ヒトH1R遺伝子には2カ所のヒスタミン及びPMAに応答するプロモーターが2カ所存在し、上流に存在するプロモーターには2分子のAP-1とEts-1の結合が必須であり、下流のプロモーターでは、PARP-1によりKu86がポリADPリボシル化されることでDNAから解離することにより転写が促進するという極めてユニークな転写調節機構が存在することが明らかとなった。さらに、苦参から単離したマーキアインの分子薬理機構について、マーキアインの標的タンパクとしてHsp90を同定した。PKCδはHsp90のクライアント蛋白であり、マーキアインは、Hsp90とPKCδの結合を阻害することで、PKCδがゴルジへ移行することを抑制し、遺伝子発現を抑制することが明らかとなった。既存のHsp90阻害薬はHeLa細胞及びアレルギーモデルラットにおいてH1R遺伝子発現亢進を抑制し、アレルギー症状を軽減することを明らかにした。Hsp90は分子シャペロンであり、ステロイドホルモン受容体など多くのシグナル分子と結合することが知られているが、アレルギーに関連するという報告はほとんどなく、本研究によりHsp90がアレルギー疾患の細胞内創薬ターゲットとなることを初めて明らかにできた。
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